近所のお子らの会話。サッカーをやっている。
女児「ゴールどこ〜?」
男児「ゴールなんかないよ。」
一同、深っけェ〜!となった。
Read Moreこころがざらついた日は、料理につきる。
生に直結したアウトプットは、よけいな枝葉をはらうよう。
喜も怒も哀楽も、優先度のひくいオプションなのかな…とか反芻しながら根野菜の水をきる。
洗濯機がピーと言ったので、ベランダに居をうつす。
今年こそは失敗しないと、一昨年の種でまた、バジルを植えた。
なんとかふっくらしてきた双葉を確認、去年のK点は越えたぞふぅ。
じぶんもまだ双葉だったころ、こたつで寝たふりしてたら毛布が降ってきたものだ。
そのまま芝居をつづけていると、竜の背中に乗って天までのぼり、綿雲に包まれていた。
土をかぶったままのバジルの葉。お前はいま、種だったころの夢を見ているのか。
…、ちょっと気がゆるみ、また脳を忙しくする。
生と死はきっと同義だな。
夏目漱石『こころ』での奥さんのフレーズがずっと残っている。
『それと同(おん)なじ理屈で』
プライドに喰われて反論したって、反論がしたかっただけなんだと、相手の態度できゅんとなる。
キッチンにもどる。
案の定焦げ目がついている。
扇風機にあたって粗熱をとる、おかずをチラと見る。
菜の花の写真をとった。
待ち受けにした。
のぞき込んだ花好きのひとが、息を吐くように言った。
「おいしそう…」
いちめんのなのはな。
いちめんのなのはな。
いちめんのなのはな、のおひたし。
いちめんのなのはなのおひたしに和える、醤油の大豆をそだてる農家のクシャミでまわした風車でおこした電気でともすLEDの灯り。
神様のありがたいはなしを天井のたかい部屋でききながら、
きみは今夜のおかずをかんがえている。
ぼくは股間の収まりを、気にしている。
ここだ。この認識のちがい。
君のおいしそうなものをうつくしいと言って、枯れおちるまで愛でる自分のおろかさ。
この峠を越えれば、戦争もきっとなくなる。
醤油を持って、女神は待っている。
ふたりは外へ出た。青白いちいさな光が、地球のうらでまたたくのを見た。
ただし厳密にはそのひと、
『おひしそふ』のニュアンスで言った。
「携帯だけど、どうやら今夜がヤマだ。
ああもしもし俺だけど。ちょうどいま、親族でからだを拭いているんだ。
いや、もう水没の心配もいらないからって医者が。
うんわかってる、終わってから来れるか?
えっ、この電話はどうやって…、って?
…ふふふ。
…ふふふふふ。
…新機種だよ。」
ふるい携帯をなおしながら、だましだまし使っている。
部品とりの同機種は4つ。
すげられてかえられて、もはやお前なのかさえ、自信がない。
それがついに、充電できなくなった。
10年ほどまえ、展示の機会をいただいた。
ノートPCの穴という穴にデバイスを挿しまくり、線という線で見えなくなったほどの筐体に、
『おじいちゃん』とキャプションした。
食べものをうけつけなくなった祖父は親族にかこまれて、そっと往生した。
小学生だった自分は看取りの経験もなく、照れと恐れで所在なく、
促されてやっと声をかけ、触れ、すぐに輪をぬけた。
目の前の公園の桜の花の、花弁の舞うのを眺めてすこしだけ、呑んでいる。
ポッケのなかの携帯は、未明のうちに散るだろう。
深夜の散歩みち。いまはじめて気付いた。
ここ私有地だ。
数年まえに住宅地ができるまで、もっと公道ぽかった。
いまにしても、家々をつなぐメインストリートがつい、私を貫かせてきた。
もちろん自分がわるいんですが…。
明日からはよけて歩く…つもりだが、
おそるべし習慣のちからに、どこまで抗えるだろうか。
いつも左に話しかけてしまう。
誰もいないのに、くしゃみのあと、おどけてしまう。
厚意が好意になり恋になり、愛になり相になり、それがおわって霊になった。
住宅地でなくひとつのでっかい住宅でも、入って出る覚悟だったのに。
そこにドアや窓がなくても、突きやぶるつもりだったのに。