ネーミング・ネーム

2025/11/03

すきだった野草に 名前があることを知ってから
毎朝のわたしは その花をついぞ見かけなくなった

ホウキが折れたということなのだろう 空はとべなくなったけれど
飛行機の運賃には臆さなくなった
花屋に行って名前をつたえ その鉢植えを買ってきた

ひとの手があなたのことを 鉢のかたちに切りとったように
わたしの脳はあなたのそのたおやかなブルーを 囚人のごとく記号化した

さいごの夜には せめてあなたを野に返そう
月光のしたをしのんで部屋をぬけ出し
その鉢をたたき割って 世界となかなおりしよう