ははくそ

2016/10/02

ほくろがおっきくなって
なんかしかも、ちょっと痛い。
こりゃ祟りにちがいないと、皮膚科をたずねた
国道沿いのきれいな建物。

患者はひとりとおらず、医師は奥で寝そべっていた。
まもなく診察室にとおされた私は、ほくろを診せた。
医師は言った。
「あぁ〜、これはほくろですね。」
仕方がないので私もオーヴァーに納得しといた。
診察は1分で終わった。
問診票はこと丁寧に書いて5分くらいだったから、
このお陰で時短になったのだと、1000円払いながら、誇った。

心配したような病気でなくてよかったと言いたい。
ただ、病院たるもの、もっと混んでいてほしかった。
置いてある読み物に目を通すのが好きなのだ。
その昔、いい感じになった女性とはじめて居酒屋に行ったが、客がいなかった。
いい感じの話もろくにできず、呑まずに食って帰った。
すぐにその店は潰れた。私もそのひととは離散した。

混んでて待つのは悔しいが、カウンタから前のめって注文待たれるのもなんか所在ない。
ひとりでいると寂しいのに、ひとといるとひとりでいることの懐かしさに心がにじんでくる。
冬は火燵でアイスを、夏は赤からで鍋を求める。
愛すべき人間とは実に生身なものである。

これをなんと言う。中庸か?
いずれにせよ、私の首のうしろで肥大する焦茶色のそれは、
『ほくろ』
だということが分かった。
今夜はきっと、ほくろに圧死させられる夢を見るだろう。