さかのぼることはや半月前
私は京都におりました
友人の結婚式に参列する為です
折りしもその日は私のたんじょうび
友人も勿論、ご存じのこと
でしたので
きっと、披露宴ではサプライズで呼ばれて記念品…みたいなことも十分に有り得るな、と不足無く仕込みをして臨んだのでありました
たすき。
転ばぬ先の私なのでした(ま転びはしないが)。
マイクの前に立ち「まさかこんなサプライズが~」と謙遜しながら、おもむろに取り出したタスキをスッと纏う。よし。
この程度のジョークなら初対面のご両家、特に中間より上の層に間違いなく涼風のような笑いを生むであろう、と私なりの気遣いでもありました。正しくは只の目立ちたがり、でした。
結果、呼ばれませんでした。
いやいやでも二次会で余興するし
その時だkitto、とポッケにタスキを忍ばせ、そわそわしてるのは演奏がプレッシャーで、と嘘をつきながら待つ。
結果、その日が私の誕生日であるという29年分の事実は
「…おめでとうございます…えー実は」に始まる自分自身による、言わば内部告発により周知されることとなりました。
勿論その夜は枕を濡らすことになるのですが、枕どころか宿が無かったので煙が目にしみるのはもうしばらくの時間を必要としました。
夜の河原町は賑やかで、そんなことをつゆとも知らぬ初対面の人々が、街路にくつろいで演奏を聴いたり、次の店を求めて往来していました。
もういっそ酔いにまかせて「私、誕生日です!」叫びながら風切ってやろうかとも思いましたが、日付変わってました。
ああもう今日はまた誰かの主役なんだねと、見知らぬ誰かにはタスキを渡すすべも無く、誕生日『だった』私はさながらあの人は今。肩を丸めて、元々丸いけど、スーパーホテル京都・四条河原町に消えてゆきました。
29歳が幕を開けました。
この1年、みなさま宜しくご面倒ください。
いとう。