月や月 ニットかぶせる 川面かな

2019/02/14

先月のこと。
月がきれいだったので散歩をしていた。
のちのちきくところに超月(スーパームーン)だったとのこと。
つきなみに、月のなかに兎をさがす。

きっと…あれが耳だな。
あれが二のうで、あれが爪、あれは袖口であれは襟。
秋もののトレンチをまとう月兎、2018AWのしろい紳士だ。

ハンドメイドのわくわく感で満たされて帰宅、どうやら帽子なくした。
もうあうことないんだろうな…っていう人からいただいたもの。
いただきものだから、ということよりも、
いただいたってこと忘れれてたくらい馴染んでいたのだ。ひどく動揺した。

ミニマル、断捨離、といえばもはや落葉めいているかもだが、
ちょうどここのところ、50シルク以上ある帽子を友人に配布していたところだった。
めがねは(鼻メガネ含めて)20ボーンくらい。
洋服もまあいわずもがなで、ある梅雨時期、高価なジャケットがカビていた。
自分のキャパをこえているな、とこと切れた。
パイプの折れそうなクローゼットには風のすきまなどなく、
そのくせぶ厚いハンガーが、なによりスパイシーだった。

えいや、と意を決した。売ってほって売って、そしてほって。
時間はかかったが、かかった衣類はなくなった。
排水溝の落葉をはらったように、血が水が、ながれはじめた。
脳内でグレーがかったビフォアのクローゼットを、他人のコレクションのように一覧し、呼吸をひとつ。
もちろん正解はないが、じぶんにとってはいまが最高だ。
人生なんていつもそうだ。らったった。

そして今日。帽子が見つかったらしい。
落ちが弱い。じぶんの人生いつもそうだ。あまたの布と決別し再生したつもりで、すっかり忘れていた。
おなじ理由で取りにいかないでいる。でも遺失物係のクローゼットはどうなる。
かなしみはそうだ。いつもだれかの栄養を欲している。うぅむ。

あした、東署、行こう。