きんぴらの材料を切っていて
あれ、知らんまに指切ってる。
全然いたくないのになんでだろう
まさか山蛭か!?
ここが都会のジャングルであることを思い出し、あらためて傷をよく見る。
なるほどそう言えば確かに、患部は左手、人差し指、第一関節のよこっちょ部分。曲げたときにできる、シワの終点。
どうやって切ったのか考えるだけでも楽しい、そんなマニアックな箇所。
きっと啄木ですら、手のここは見てないであろう。
そうかきっと、あれだ、親に期待されない子どもが自尊心を持てず
「期待されない落ちこぼれ」た方向へと自らレールを敷く、あの感じ。
わかるわかるよ指の傷。お前はどうせ目立たない。
だから痛みなんてない。そもそも存在自体がない様なものなのだから。
いたたまれなくなって、そっと口づけた。レクイエムをささやく唇で。
そこでおかしなことが起こる。
血液の、あの鉄の味がどうしてか、感じられない。
指の云々でなく、まさか私の感覚に異常が!?
こうなるともう、立場も分別もない。
すがる様にして先ほどの、指をみた。
血ではなく唐辛子だった。
感覚は辛みという衣をまとって、そのあとしっかりやってきた。
ううん辛いからじゃない。嬉しいから泣いてるの。