哀しき中華屋

2017/07/09

「杏仁豆腐って単品はないんですか?」
「そうですね、セットのみで…」
「えー、どうしよ」
「お食事はお済みでしたか?」
「いや別に…(チッ)じゃあこのレディースセット。」

そして客は、杏仁豆腐をきっちり、平らげて帰った。
従業員一家は泣きながら、冷めたレディースセットで遅めの昼食をとった。
粘度の増した麻婆が、弱った初夏の胃に堪えた。

多様化の矢印にのるのは職だけでなく食もである。
主食、副食そしてデザート…といったヒエラルキーの足下に、
崩れかけた支柱を見つけた気分であった。