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あれ

2015/05/03
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富田駅で電車を降りた。
それがいけなかった。

週末で、むしゃくしゃしていた。
予定がないから。
レディーボーデンをねぶりねぶり、録り貯めたヨン様をじっくり観よう、と、ムフフな顔して歩いた。
ふとそれが、3分前に思い付いた『ひと駅前の下車−いつもより歩け、あたし−』と相殺していることに気がついたけれど、すぐ忘れた。

市街地が近いせいかこの辺りはお店も多い。
まるで客として雇われてるみたいなハンチングのおじ様が、古喫茶のカウンタでお話に興じていた。
一人でお店に入ることにためらいを感じなくなって久しい。今日が平日なら自分も躰をねじ込んだだろう。
兎も角今日は予定のない金曜日。ヒールを浮かせて歩け歩け、あたし。

線路の音をたよりに真っ直ぐ歩いて15分。見たことのある、質屋のおどけた看板が見えた。
少しほっとしたけれど辺りには何もなかった。街灯も離れていた。後ろに知らない男がいた。

居直ったのか居直ってすらいないのか、そんな情報の何も伝わってこない表情。無機おとこ。
ただ、ひとつだけ感じることがあった。
これはヤバい。

元の向きに躰をひるがえし走れ走れあたし、でも下手に刺激するのはノンノン。
気まずそうな目礼だけしといて、ヒールの音を強めて歩いた。誰か通って。誰か話しかけてよ。電話してよ。
そうだ、電話。
彼氏(と思っている妻子持ちの友人)に電話をかけようとカバンに手を入れた。男に見えない角度で。
男とはずっと、2.5メートル長のムカデ競走を営んでいた。

カバンの中をまさぐる、しかし携帯が見つからない。
少し脇汗をかきながらマチ部分のポケットであれが手に触れ、私は作戦を変更した。
これを、使おう。この、あれを。

タイミングが良いのか悪いのか、不要品回収車が無遠慮なやさしい声でやってきて、通り過ぎていった。
まさにそのタイミングだった。私と男の息は、ある意味ぴったりだった。
振り向いた私の眼に入ったのは飛び掛かってくる男の無機質な表情だった。鹿に気付かれて狼も少しだけひるんではいたが、その姿は、一度タガの外れた粗暴な男性性、男性自身そのものだった。

ただ、それに呼応して私も冷徹になれた。
私の手は開封したとき一度きりの操作を覚えていて、一瞬の間にあれのロックを解除し、電源スイッチに指をやった。
そして彼に、触れられる前に触れんと、あれを向けた。

えっw使い途あんの?
と思われたらイヤだからと、通販で買ったあれ。
使った側が傷害罪に問われたとも聞いた、強力なこの、あれ。
くらえ!
反対車線の街灯に牙と耳の影を浮き彫りされた男は、女の手でバリバリと音を立てる黒いあれに硬直した。

ジョリ。
ジョリジョリッ。

前のめりのままの男の顔に触れたと思ったら、もうあっという間に、本当にあっという間に、男の髭がすべて剃り落とされた。
うーんやっぱり5枚刃は違うわねェ。

玉手箱を逆さに開けた様に、急に若返った男が、仲間にしてほしそうにこちらを見ている。
勿論しなかった。

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2015/04/26
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トマトとモッツァレラと私。

ありとあらゆる決めごとに、
すべてのうつくしい歴史に自然に、
自分の感情を存在感を挟み込む。

さあ召し上がれ、スーパーの惣菜をただ盛りつけた、やつです。

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2015/04/26
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僕らがつながってる、のじゃなくて

インターネットがつながっていた、

ただそれだけの事だったね。

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血が薄まる!

2015/04/19
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先日
被爆体験の『語りべ』をヒロシマで養成、という報道を聞いた。
戦争を語れるひとがいよいよ、居なくなっていくなあとかねてから思っては居た。
世界、どころか自分とその周りを見るだけでも、まだまだ戦争から学びきれてないのかな、と痛感させられることは多い。
中一の夏休みに訊いて集めさせられた体験談も、自分はもう、あまり覚えていない。
いやそれは自分が寝坊しただけだったかな。
月並みだろうが、他者や世界を意識するきっかけが『戦』だ、なんてのは気分が悪い。

ただ
ここへきて戦争に、新しく思いを馳せる。
まず、どうやってもそれは自分の体験ではないということ。
自分の体験としてはいけない、言葉尻で言うとすべて「〜だったそうな」「〜だと思います」としなければならないこと。
このことを大きく捉えたい。
好きな曲をコピーするのではなくその人のルーツになった音楽をコピーした方が、時間はかかるがきっと長持ちするだろう。
ニセモノ、二番煎じだからヤメロ、というのではなくて、もしかすると、他力本願的はたまた綺麗ごとの様だけれど、
戦争を一次的に語れる人、最後の一人が居なくなったとき、人は戦争を基準に平和を考える事を止めなければならないのではないか。
「こんなに悲惨だった、だからやめよう」はもうスルメ尽くされたとして、戦、争いと言う選択肢がそもそも存在しない世界に。
安く言えば卒業。窓ガラス壊して卒業。

時間はとまらない。それは皆分かっている。
時間は新しい客に会わせてくれ、古い客を隅に追いやる。
だから私は飲み会に遅れたときもめげない。寧ろ楽しい。
親戚の中で最年少、ちやほやされてきた私が、従兄弟や、兄の子に嫉妬を感じるのはそのせいだろう。私のハンケチはすべて円形である。

記憶はそう残らない、だから私たちは新しい記憶をしまうスキマをもつ。
祖母の居なくなった祖母宅はもうじき、近所のガキの心霊スポットになるだろう。
そうしてそいつらのエロ本の隠し場所になり、健全な成長に貢献出来たら。

さっき聴いたフレーズ、しまい忘れて消えて、そのうちにきっと消えたことも忘れる。
音楽は無情だな。でも日常だ。

かいこのままでは、空は飛べない。

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際限なき再現、なんっちゃってっ

2015/03/20
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口語表現がいいとか
否、文語もいいですよとか
まあ結局どちらも美しいよね、とか
「ことば」による表現には違いないから
ただ、しかし、それらはすべて、確実に明日が来るという安心に乗っかっているけれど。

今日の、お昼のこと。
平成生まれの、ちょっと若者に、昭和の遺産(という言い方も、ですが)を話す機会で
いろいろ言ってみたけれどうまく伝わらずに、ことばを捨ててしまった私。
「…ん…えと…まあ、ググってみて!」
この瞬間に、すべてが融けた。
マンモスと氷は、マンモス水になった。
急に私は続くことばを失って、氷になった。

日本での公共ラジオ放送開始から90周年とのことで、テレビとラジオを較べたコメントがいくつか有った。
産まれた時から目も耳も揃っていた私からすれば、どちらもドングリに思えてならない(ムスビにも思えてならない)。
私の使っているギターにはマイクがついていない。では大きな音を出したい、スピーカーにつなぎたい、という時はどうするか。
その音をギター自体の振動から信号として拾い、予めマイクで録っておいたギターの音色に変換して出力する、という、まあ「邪道」とか「外道」、「ニセモノ」とか言われる方法で、音を再現することへの投石として十二分なやり方でやっている。

テレビはラジオに較べて、受け取り手の想像力を奪ってしまうという。それはそうかもしれない。
テレビはラジオに較べて、受け取り手の想像力を奪ってしまうからラジオの方が創造的だという。それはうそかもしれない。
そんなことを、思っていた。
音声放送が始まった時点で既にマイクとスピーカーは、レコードは有ったわけで、そのギジュツありきの放送行為が「想像力をかき立てる目的で」音声だけの情報に絞った、なんて気のきき過ぎた微調整をすることは考え難い。
少なくともラジオをすごいすごい言ってた(だろう)当時のベクトルはテレビに向かってた筈。それは今の情報が温度感や「生」の志向、つまるところの再現度合いや精度、になって来ているのをみても分かる。それに追随する形でのラジオだったのではなかろうか。そんなことを思っていた。詳しくは今思っていた。

やはり我々はそれ以外の、「ふつうの」世界では見、聞き、嗅いで触れ、味わっているのだから、
新しい技術がそこを追求するのは自然なことだと思うし、それ以外の、第六感をこの技術によって初めて提供する、ということの方がそれこそ難しいのかもしれない。第三のビールは名前こそ革新だが、そういう意味でビールに追随すると、殆どのユーザは思っているだろう。

若者との会話を思い出してみる。
私が彼に、後世に遺せるものは名言や名曲ではなく、フォトアルバムだとしたら。
ことばが気持ちを越えてしまった、という感覚をおぼえることもあれば
今日に至ってはその逆で、自分のふにゃふにゃさにも嘆息する。
下着から車までネットで買ってる自分の生活をして「ちょっと近くで見て。いとうに見えるけどw(www)の集合体だから」と言ったことがあった。いまの躰はまさにそれを極めつつあるな、と思った。

会話の中で宙に浮いた、昭和の遺産がちょっと、残念だった。
平成の皺に秘宝館は、刻まれていなかった。

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紙は神よりも薄し

2015/03/16
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メモの整理(アーカイブ)をしていて
時期別にならべたいとき、ありますよね。
でも所詮はメモですから、日付までご丁寧に残してることって、少ないんじゃないでしょうか。メモ越えちゃいますからね。おやおや一行日記でしょうか。
でも大丈夫。メモされた紙をみれば大体は分かります。
やれバイト先の喫茶の伝票裏。やれ授業のプリント裏。やれ免停講習の葉書裏。
それまでの主役、紙上の情報はすべて裏を提供して、脇に徹します。
そう思うと紙に生きる文字たち、って刹那的ね。
いつか曲にしよう。
寝よう。グウ。

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